編集

退職金運用の注意点!投資信託と定期預金の選択

2023/10/18


退職金が振り込まれた場合、銀行から以下のような内容の電話がかかってくるケースが多いです。

「〇〇さま、退職金の入金がありましたのでご連絡です。この度は、大きなお金をお預け入れいただき、どうもありがとうございます。当行では、さまざまな退職金向けのプランをご用意しておりますので、ぜひご相談させていただきたいのですが、ご都合の良い日時はございますか?」

今か今かと楽しみに待っていた退職金ですので、わざわざ電話で知らせてくれたことを親切に思うでしょう。ましてや資産運用などの知識がない人にとって、金融の専門家である銀行員の話を聞いてみたいと考える人が多いことだと思います。

ただ、ここで覚えておきたいことは、銀行も営利を目的とした民間企業ということです。電話をかけてくる大きな目的は、「セールス」です。

銀行にとって、普通預金にお金が入っているだけでは利益になりません。保険や投資信託などの、資産運用商品に入ってもらうことで利益が生まれます。

「オススメされるがまま契約してしまい、あとで後悔した」ということにならないよう金融の知識が浅い人は予備知識をつけてから銀行に足を運ぶ必要があるのです。

そこでこの記事では、銀行で紹介される商品の特徴・注意点について解説しています。退職金は、これまで一生懸命働いてきた成果です。大切なお金を有効活用するために、自分に合った選択ができるように、資産運用が何たるかを知って知識を深めていきましょう。

銀行員がオススメする商品は?銀行に行く前に考えておくこと

退職金を受け取った人向けに、銀行員がオススメする主な商品は以下の3つです。

  • 退職金専用定期預金
  • 投資信託
  • 外貨建て保険商品

以下の項目で詳しい内容を説明していきますが、ほとんどがリスクのある資産運用商品を含むため、短期間で利益が出るものではありません。そのため使い道の決まっていない余裕資金で購入する必要があります。

そこで銀行に相談に行く前に、受け取った退職金の使い道をある程度把握しておくことが大切です。

例えばローンの返済・車の購入・お子さんやお孫さんの学費、結婚資金・老後の生活費など…。

今は必要ないと思っても、そういえば「家電の買い替えが近いかも…」「家のリフォームが必要かも…」など、よく考えてみたらお金が必要になることがあるかもしれません。

お金の使い道をきちんと整理しておかないと、今までに無い大金が振り込まれたことで気分が高まり、本当は必要なお金までも、資産運用にまわしてしまいかねません。

「運用するのであれば〇〇円まで」などという意思を、しっかり持つようにしましょう。

投資信託と定期預金のセットプランに飛びつかない

「退職金専用定期預金」は、主に2つの種類があります。

  1. 定期預金だけ
  2. 定期預金と投資信託がセット

注意しなければいけないことは、②のプランの金利の高さに惑わされないことです。それぞれの内容を説明していきます。

1.) はシンプルに定期預金だけのプラン。誰でも申込できる定期預金と比較して、利息が高いところが魅力。
ただ、高い利息と言っても今は低金利時代のため、年1%以下の利回りがほとんどです。

満期が来る前に解約しても元本割れすることは無いため、リスクを避けたい人にオススメです。

2.) は定期預金と同時に投資信託を買うことで、定期預金の利率がUPするプラン。

「1000万円ある退職金のうち、半分の500万円で投資信託を買ってくれれば、もう半分の500万分は、利回りの高い定期預金ができますよ」といったイメージで、1.)のプランよりも利率が高いことが特徴です。

金利・お金を預ける期間は、金融機関ごとに異なります。例えばみずほ銀行の「退職金運用プラン」という商品の場合、300万円以上の預け入れで、「3か月で年6%」の金利が付きます。(2020年10月現在)

みずほ銀行HP
https://www.mizuhobank.co.jp/retail/campaign/money_plan/taishokukin/index.html

年6%と言われると、とても魅力的に感じますが、ここで陥りやすいポイントは2つ。

1つ目は、「年〇%」と記載されているけれど、3か月間の定期預金であること。預入した金額に対して単純に6%の利息が付くわけではありません。

また、そこからさらに税金も引かれるので気を付けましょう。

誤 500万円×年6%=30万円
正 500万円×年6%×90日/365日=約7万3千円
・税引き後の利息は約5万9千円

2つ目は投資信託を必ず買う必要があり、投資信託の購入には申込手数料がかかることです。投資信託の申込手数料は金融機関ごとに異なり、1%代のものもあれば、高いものだと3%代の商品もあります。

例えば3%の投資信託を500万円で購入した場合、申込と同時に15万円の手数料が引かれることになるのです。
つまり、定期預金の利息以上の金額が手数料で消えてしまいます。

投資信託の運用により、手数料を上回る利益を上げられる可能性も、もちろんありますが、投資信託は、いつまでにどのくらいのお金を増やせるか保証してくれる商品ではありません。

定期預金の利息欲しさに、必要以上の金額で投資信託を買ってしまうと、いざお金が必要になったときに、利益が出ていないどころか、損失が出ている可能性もあります。

特に投資信託初心者は、定期預金の金利の高さに惑わされないことが大切です。

外貨建て保険商品の注意点

銀行で外貨建て保険商品もオススメされるケースが多いでしょう。「外貨建て」というのは、日本円で申込したら、円→外貨へ両替され、その外貨で運用する商品のことです。

「外貨の固定金利で増え続ける」「運用益が日本円の目標金額に到達した場合に、自動で運用が止まる」「万が一死亡した場合に保険金がもらえる」など、投資信託には無い安心感があるため、運用初心者でも始めやすい商品です。

決して悪い商品というわけではありませんが、主に3つの注意点があります。申込する場合は以下の内容をよく確認することが大切です。

  1. 元本保証ではなく、増えるまでに期間がかかる
  2. 手数料がかかる
  3. 1社だけではなく複数の商品を比較したほうがよい

元本保証ではなく、増えるまでに期間がかかる

まず、この商品は日本円の元本保証はありません。つまり、申込した金額分が必ず戻ってくるというお約束はされていない商品ということです。

そして、いつまでにどのくらい増えるという保証もありません。外貨では決まった金利で増え続けますが、それを日本円に両替するための「為替レート」などの影響を受けます。

もし、申込当初よりも為替レートの状況が悪くなり、その悪い状態が長く続くようであれば、増えるまでに10年以上の期間がかかる可能性があるのです。

そのため、「10年以内に必ず使いたいお金」の場合は、オススメができません。銀行員に「為替レートがずっと悪い状況が続くことはありません」と説明されても、100%ではありませんので、使い道の決まっているお金で申込するのは、やめたほうがよいでしょう。

手数料がかかる

ほとんどの保険商品は、手数料の負担があります。手数料がどのタイミングで引かれるかは、保険会社ごとに異なりますが、申込時・運用時・解約時のいずれかが一般的です。

申込手数料がかかることは投資信託と同じですが、投資信託のほうが選べる商品数が圧倒的に多く、ネット証券などの場合は、申込手数料が無料の商品もあります。

そのため、「少ない手数料で運用したい」という思いが強い人は、投資信託のほうが向いている場合があります。

1社だけではなく、複数の商品を見比べるべき

外貨建て保険は、さまざまな保険会社が取り扱っています。保険会社によって、金利の高さなどの条件が異なるため、もし外貨建て保険の申込を検討しているのであれば、複数の商品を見比べてから入るようにしましょう。

また、銀行は販売した保険を取り扱っている保険会社から、手数料を受け取るしくみで利益を得ています。当然、手数料の高い商品を販売したほうが銀行にとってメリットになるため、そういった商品をオススメしてくることもあるでしょう。

1つの銀行で全ての保険会社の商品を販売しているわけではありませんので、インターネットなどを活用して、自分の目で他社の商品と比較することが大切です。

銀行で相談する際は一度持ち帰るスタンスが大切

以上、銀行でオススメされる商品の特徴・注意点について説明してきました。

特に資産運用初心者の場合は、分からないことが多いので、その情報が良いのか悪いのか、その場で判断することが難しいと思います。そのため銀行員に相談する場合は、その場の空気に左右されず提案された内容をいったん家に持ち帰ることが大切です。

銀行で商品の提案を受ける場合、銀行員は目標のため一生懸命に説明をしてきますから、運用初心者や、断ることが苦手な優しい人は、入らないといけない雰囲気に負けて契約してしまうこともあるかもしれません。

資産運用商品は、自分でしっかりと理解して入ることが重要です。「何に入ったのかよく分からない」という状態が危険で、後々の後悔に繋がります。

ぜひ、自分でもすべからく十分に考慮して商品の選択をしてくださいね。