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分配金のメリット・デメリットとは?受取型と再投資型の違い

2023/10/18


分配金とは、投資信託や株式などの投資商品から投資家に配当として支払われる利益のことを指します。投資先の企業やファンドが利益を上げた場合、その一部を投資家に還元する形で分配されます。

分配金には「受取型」と「再投資型」という2つのタイプがあり、「どちらを選べばいいのだろう」と悩みがち。特に会社を退職したシニア世代は、「給料のように、毎月受け取るお金が欲しい」という考えから、「受取型」を選ぶ人も多いでしょう。

ただ、分配金は純粋な利益ではない場合もあるため、よく分からず受取型を選択してしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔してしまう可能性があります。そのため、分配金のしくみをよく理解したうえで、どちらかのタイプを選択する必要があるのです。

今回の記事では、分配金の誤解しやすいポイントや、受取型と再投資型のメリット・デメリットについて解説していきます。自分で納得して運用方法を選ぶようにしましょう。

「分配金」ってどんなもの?誤解しやすいポイント

分配金とは、投資信託商品の「決算日」に、投資家に支払われるお金のこと。

「決算日」とは

「決算」と聞くと、会社の決算をイメージされる人も多いでしょう。会社の決算では、一定期間の売上・損失・経費などを整理することで、経営状態を明確にしています。投資信託も会社と同じように、「決算日」に運用状況を把握するための計算を行っているのです。

分配金というと、「定期預金の利息や、株の配当金のようなものかな?」と考えがちですが、違う点がいくつもあります。ここでは、誤解しやすいポイントを3つ説明します。

分配金の内訳は利益だけではない

分配金と聞くと、しっかり利益分だけもらえそうなイメージですが、実はそうではありません。運用状況や、自分がその商品を買ったときの価格によって、分配金の内訳が変わります

分配金の内訳の種類は、以下の2つです。

  1. 普通分配金…運用から生まれた収益。税金がかかる
  2. 元本払戻金…自分の投資金の一部。税金がかからない。

運用状況が良ければ、分配金の内訳が➀だけの場合もあります。その時は純粋に利益分のみ受け取れるので嬉しいことです。

しかし、運用状況が悪ければ➀+➁の時や、②だけの場合もあります。
元本払戻金は、自分が商品を購入する時に出した金額の一部が戻ってくるだけですから、利益ではありません

以前、元本払戻金は「特別分配金」という名称でしたが、利益と間違えやすいことを理由に変更されました。定期預金の利息や株の配当金と違い、純粋な利益だけで構成されているとは限らないことを覚えておきましょう。

また、普通分配金には税金がかかり、元本払戻金は非課税の取り扱いとなっています。税金の利率は20.315%(2020年10月現在)。税金をかけたくないのであれば、NISA口座を使用して運用することをオススメします。

分配される金額は決まっていない

分配金をいくら支払うかは、運用状況や今後の戦略を検討したうえで運用会社が決めるもの。投資信託商品ごとに、現在いくらの分配金を支払っているのか事前に分かります。(1口あたりの金額で記載)

ただ、必ず支払うという保証は無いため、以下の注意点があります。

  • いくら支払われるかは決まっていない
  • これまで支払われていた金額よりも、下がってしまう場合がある
  • まったく支払われなくなる場合がある

「分配金を受取って、生活費にあてたい」と考えている人は、必ずもらい続けることができるお金ではないため、そのお金に頼り切らないようにしましょう。

分配金をたくさん出す商品が良い商品というわけでは無い

商品ごとに分配金の金額や、支払われる回数は違います。なるべく金額や回数が多い商品に目がいきがちですが、そういった商品が必ずしも良い商品というわけではありません。

分配金の支払い原資は、投資信託の純資産です。
純資産は、投資家から集めたお金や運用益から、経費などを差し引いた金額で構成されています。そのお金の一部を、決算の度に取り崩しているのです。

純資産が取り崩されるということは、つまり今後運用会社が運用できるお金が減るということですから、長期でお金を増やしていきたいと考えている人にとって不利な面もあります。

もしすぐにお金が欲しいのではなく、長くじっくり資産を増やしていきたいのであれば、そもそも分配金を出さない商品が向いているかもしれません。

投資信託商品ごとに、「分配金を出すもの」「分配金を出さないもの」もしくは、分配金を「毎月」・「年2回」・「年1回」出すなど特徴が違うため、よく確認して選ぶようにしましょう。

どちらが向いている?「受取型」と「再投資型」のメリット・デメリット

分配金は、「受取型」と「再投資型」から選択することができます。

  • 「受取型」…銀行口座に入金され、自由に使うことができる
  • 「再投資型」…受け取らず、自動的に同じ商品を購入する

「受取型」のメリット・デメリット

「受取型」のメリット・デメリットは以下のようになっています。

  • メリット:お金をすぐに使うことができる
  • デメリット:長期の運用に向かない

銀行の口座にお金が入金されるため、買い物や光熱費などの出費に充てることができます。

年金暮らしをしている人は、2か月に1回しか収入が無い人も多いでしょう。毎月分配金タイプの商品を購入することで、毎月お金を受取ることができます。これまで貯めてきたお金をただ取り崩す生活が悲しいと感じている人にとって、毎月お金が入金されることは嬉しいものです。

しかし、上記の項目で説明したように受け取る金額がすべて利益とは限りません。もし元本払戻金の割合が多いようであれば、今後の運用に充てる資金が減ることになります。そのため、長期的に運用したい人には向いていない運用スタイルでしょう。

また、受け取ったお金を生活費などの出費に充てず、他の投資信託商品の買い付けに充てることもオススメです。
分散投資にもなり、万が一元本払戻金の割合が多かったとしても、再び運用資金にすることで利益が出る可能性が広がります。

その場合は、なるべく購入手数料が少ない・もしくはかからない商品を選択することが、効率よく運用するコツです。

「再投資型」のメリット・デメリット

「再投資型」のメリット・デメリットは以下のようになっています。

  • メリット:複利効果が高まる
  • デメリット:すぐにお金が使えない

再投資型を選択することで、分配金で同じ商品を自動的に購入することができます。「複利効果」と言って、生まれた利益を再び投資資金にまわすことで、利益から利益を生み出す効果が期待できるのです。

その反面、定期的にお金を受取ることはできません。すぐにお金を使う必要が無く、長期的に運用がしたい人・お金があったらすぐに使ってしまう人に向いているでしょう。

また、再投資で同じ商品を購入した場合は、基本的に購入手数料がかからないところも魅力です。

しかし、分配金の内訳のうち、普通分配金分から税金を差し引いた金額で再投資が行われるところが隠れたデメリット。再投資のたびに、普通分配金に対して、約20%の税金を払い続けることになります。

税金をかけず効率よく運用したいのであれば、NISA口座を使用するか、分配金の支払いがそもそも無い商品を選択することがオススメです。

まとめ

以上、分配金の「受取型」・「再投資型」について説明をしてきました。

「すぐに使いたいのか」・「すぐに使わず長期運用したいのか」によって、選択肢が分かれることがお分かりいただけたかと思います。ご自身の投資目的をよく考え、自分に合った方法や商品を選んでみてくださいね。